三者三様


 

 

「はいはーい、とうちゃーく!」
 がちゃり、とドアを開け、脳天気な丹波の声が玄関に響く。
「う〜っ」
 半ば倒れ込むように、その体にもたれかかって、堺もドアをくぐった。
「おじゃましま〜す……」
 舌っ足らずに言いながら、世良が続いて入ってくる。その背中でドアが閉まった。
「丹波、さっさと入れよ! 狭いだろ」
「ん〜、ちょっと待ってよ、今靴脱いでるんだから」
 玄関で押し合いへし合いしながら、ようやく中へなだれ込む。
「でんき、でんき」
 丹波が壁に手を伸ばし、ぱっと廊下が明るくなった。
「うーし、飲み直そうぜ!」
「はぁ?」
 思わず堺は口をあんぐりと開けた。
「ちょ、何言ってんだよ! もう十分だろ!」
「堺こそ何言ってんの。せっかく明日休みなんだよ? 堺の部屋なら誰に気兼ねすることもないしー、そのために来たんだぜ」
 こちらを振り向いてにかっと笑った丹波は、ふらつきながらも廊下を進んでいく。
「こないだの酒、まだ残ってんだろ? 足りなくなったら買いに行けばいいけど」
 勝手にキッチンへずかずかと入っていく。溜め息をついて、後ろの世良を見やった。少し赤い顔で、目をぱちぱちさせている。
「おい、大丈夫かよ」
「平気っスよう、これぐらい!」
 先ほどの丹波と同じようにニッと笑って、
「俺もまだ飲み足りないっス。いいっスよね、堺さん!」
「……」
 眉をひそめ、額に手をやった。
「…勝手にしろ」
 いつもの自分だったら、いくら休みの前日とはいえ、そこまではめを外すのは論外だと止めているかもしれない。けれど、今の自分はかなり酔っている。その自覚はある。
(めんどくせぇ……)
 同じように酔っ払っている丹波と世良相手では、止めたところで聞くとは思えない。くたびれているのに、無駄な労力を使いたくない。
 世良はうれしそうに堺を追い越して廊下を歩いていく。もう一度溜め息をついて、仕方なくその後を追った。
 キッチンでは、丹波が慣れた様子でグラスとつまみを用意している。
「あ、世良、音楽でもかけてよ。そこのラックから好きなの選んで」
 家主の堺を尻目にそんなことを言う。
「はーい」
 世良も世良で、荷物を置いたと思うとラックのところまで行き、何やらCDを選んでいる。文句を言う気にもなれず、堺はソファに沈み込んだ。
「お待たせー」
 すぐに皿とグラスを持って丹波が近付いてきた。ちょうど同じタイミングで、静かな音楽がコンポから流れ出す。
「ありがとな、世良。こっち座れよ」
 どっかりと堺の隣に腰を下ろして、丹波はななめ向かいのソファを示した。
「っス」
 言われた通り、世良が座る。堺は手を伸ばし、つまみのナッツを取って食べた。隣で丹波はウィスキーの水割りを作っている。
「氷足りっかなー」
「あ、なくなったら俺が買ってきますよ」
「お前ら、そんなに飲む気かよ。いい加減にしとけ」
「へーきへーき、これぐらい。なっ、世良?」
「うす!」
 へらへらと機嫌よさそうに笑う丹波と世良は、明らかに酔っ払っている。何が平気なんだよ。知らねぇからな。
 そう心の中で毒づいて、堺は丹波の用意した酒のグラスを持ち上げた。ウィスキーを口に含むと、じわりと熱が頭の中を広がっていくようだ。味などよくわからない。俺も相当酔ってんな。客観的に考えた。
「そう言う堺くんだって、結構きてんじゃない?」
 まるで頭の中を読んだようにそう言って、丹波が顔を覗き込んできた。ちっ、と舌打ちをする。酔っぱらいのくせに、人の考えを読むんじゃねぇよ。
「ったく、俺は帰れって言ったのによ」
「えー、だってまだ飲み足りないんだもん」
「他のやつらはさっさと帰ったのに、お前らときたら……」
 よりによって最後まで残っていたのがこのメンツとは。解散した後、堺んち行こうぜ!俺も行きたいっス!と、堺の言うことも聞かずについてきたのだ。
「いいじゃないっスか。俺うれしいんスよ、丹さんと堺さんと三人きりなんて、めったにあることじゃないし」
 斜め向かいに座った世良が、にこにこと言う。
「そうだよな、お前だいたい若手と一緒にいるもんな」
 丹波は笑って、持ったウィスキーグラスを高く掲げた。
「よっし、今夜はとことん飲もうぜ」
 だから、やめとけって言ってるのに。しかしもう何か言う気にもなれず、堺は黙々とグラスを口に運んだ。
 そして思った通り、威勢だけはいいものの、既に相当飲んだ後の体では、そうそう飲み続けるのも無理があったようだ。
 三人で様々な話をしながら酒を飲んでいたが、そのペースは三人とも、さすがに落ちてきた。赤くなった顔で冗談交じりに話す丹波に、酒をちびちび啜りながら世良はいちいち頷いて聞いている。堺はというと、半分聞いて半分聞き流しているような状態だ。なんだか眠くなってきた。
 ちらりと時計を見ると、とうに真夜中という時間になっている。やれやれ。
 こっそり息をついた時、
「ん〜」
 隣の丹波が、突然肩にもたれかかってきた。
「おい、大丈夫かよ」
「ん〜、へいき……」
 目をしょぼしょぼさせて、片手で擦っている。
「眠いんだろ」
「ん〜……」
「全く……」
 今度は盛大に溜め息をつく。
「だから言っただろ、やめとけって。ほんとにもう……」
「あは、堺くんやさしー」
 ふにゃりと笑って、丹波は顔を上げた。
「そういうとこ好きだよ。キスしていい?」
「あのな」
 呆れて何か言う前に、ずずい、と近付いて、
「ん、」
 唇を塞がれていた。
「ん……、お、い」
 顔を背けようとするが、唇が追いかけて、舌を出して舐めてくる。
「ふ……」
 この酔っぱらいめ。それ以上の抵抗はやめた。別に酔った者同士でキスをするなど初めてのことでもないし、丹波とだって、前にしたこともある。そのうち飽きるだろう。
 そう思って目を閉じ、好きにさせることにした。斜め向かいの世良が固まっているのが気配でわかるが、そのフォローもめんどくさい。もういいや。
 丹波が舌を絡めてきたので、軽く応える。ちゅ、ちゅ、とわざと音を立てて、何度も唇を吸われた。なんだか頭がぼうっとする。気持ちよくなってきたのだ。
 とろんとした目で、口を開く。舌を絡め合うと、粘膜がいやらしい痺れを伝えてくる。
「は……」
 ごそ、と丹波の手が動いて、服の裾を捲り上げた。ゆるゆると中に入ってきて、直接肌に触れる。
「ん……」
 ばか、やめろ。手を上げて、それを押さえようとした時。
「ん、」
 ふと丹波が目を上げた。
「なに、世良」
 僅かに離れた唇をぺろりと舐める。え、と振り返りかけた瞬間、がしっ、と肩を掴まれた。
「あ、」
「堺さん! 俺も!」
「え、ちょ……っ」
 ぐいっとソファに体を押しつけられ、目をぱちぱちさせる。だが状況を飲み込めないまま、唇を塞がれていた。
「んんっ……」
 目の前には世良の顔。丹波じゃない。
「ん、ん〜っ! う……」
 ぬるりと舌が入ってくる。
「ぁ、ふ……」
 激しく吸われて、息ができない。けれど、柔らかな感触は丹波のそれとまた少し違っていて、嫌悪感どころか、なんだか安心感を得られる。
「んん……」
 つられるように舌を差し出し、顔を傾ける。世良のキスは激しいながらも、仕草が優しい。何度も啄むように唇を吸われて、いつしか体の力が抜けていった。
「なんだよ世良ぁ、勃ってんじゃん」
 頭の上から声が聞こえて、はっとした。見ると、堺の背中を支えているのは丹波だ。おもしろそうに目を細め、向かいにいる世良に言ったようだった。
「だぁって! 目の前であんなエロいキスされたらこうなっちゃいますよ! ましてや堺さんと!」
 顔を赤くした世良が懸命に主張している。こいつらは何を言ってるんだ。眉を寄せ堺が見上げていると、おもちゃを見つけた子どものような顔で、丹波が手を伸ばした。
「まぁなぁ、若いししょうがないよなぁ」
 軽く股間を撫で上げ、世良が小さく息を継いだ。にひひ、と丹波は笑って、その目がこちらを見下ろす。
「堺、抜いてやれば?」
「はぁ?」
 わけがわからず、首を捻って丹波の顔をまともに見た。
「なんで俺が」
「こうなったのもお前の責任だし。先輩としてさ」
「ふざけんな、お前だろ」
「え、いいんすか堺さん」
 振り返ると、世良がじり、と距離を詰めてきた。その股間はズボンの上からでも固く盛り上がっているのがわかって、思わず目を逸らす。
「よくねぇよ! 何聞いてんだてめぇは」
「いや、でも、俺このままじゃ辛いんスけど」
「知るか!」
「まぁまぁ」
 再び丹波が手を伸ばし、世良のズボンのファスナーに触れた。ジッ、と下ろす。世良も自分でベルトを緩め、大きく前を開いた。
「もうちょい下ろして」
 丹波に促され、膝あたりまで下着ごとズボンを下ろす。既に腹につくほど上を向いたペニスが眼前に現れた。大きくカリが張って、血管が浮き出ている。
「はい、堺、握って」
 言いながら丹波が堺の手を取り、そちらへ誘導させていく。
「ちょ、てめ……」
 あっと思った時には、世良のペニスに指が触れていた。
「っ……」
 温かくて、柔らかい、なのに固く芯を持っている。自分のものと同じはずなのに、他人のものはやはり違う。堺がそのまま動けずにいると、その手の上から丹波が包み込むように握ってきた。
「ほら〜、擦ってやんなきゃ」
「あ……」
 されるがままに手が動く。途端にペニスはぴくりと震えて、反応を返してきた。世良が熱い息を吐く。
「うぁ……やべ……」
 唇を舐めて、はぁはぁと何度も呼吸を繰り返した。手を上下させるごとに、ペニスはますます固くなり、先端に透明な液体がじわりと浮かんできた。本当に、他人のものがいきり立っていくのを、こんなに間近で見るのは初めてだ。
 思わずそちらに気を取られている間に、丹波の手がもぞりと動いた。堺のズボンの裾から入り込み、下着の中にまで指先が届いた。悪戯に撫でられて、目を見開く。
「あっ」
「おまえも勃起してんじゃん」
 笑いながら、手をますます大胆に動かした。すぐにかちゃかちゃとベルトが外され、手を突っ込まれた。
「は……」
 もぞり、と腰が勝手に動く。舌なめずりをして、丹波が目を細めた。
「もうさ、最後までやっちゃおうぜ」
 下着の中で性器を握り込まれて、身を竦ませる。
「なに、言って……」
「ここまできたら、出しちゃわないと厳しいっしょ」
 数回扱かれただけで、ぞくぞくと震えが走る。自身はもう完全に立ち上がって、刺激を待ちわびているかのように、足の間から主張してくる。
 丹波が手を茎に沿って動かしたと思うと、やわやわと袋を揉まれて、甘い感覚に肌が粟立った。
「あっ……あ、」
 思わず世良のペニスから手を離してしまった。自由になった世良はごそりと動いて、堺の体に覆い被さってきた。慌てて見上げる。
「んだよ、せら、どけ……っ」
「いやっス」
 両手で頬を挟まれて、キスをされた。
「ん、む……っんぅ……!」
 同時に腰を擦りつけてきて、剥き出しのペニスが擦れ合った。
「あ……っ!」
 快感をやり過ごそうと、懸命に息を吐く。だが、気を落ち着かせようとしたのに、丹波の手がシャツを捲り上げて邪魔をした。
「堺、暑そうだね」
 楽しそうに言って、乳首を指先でいじり回してくる。つんと尖った二つの部分に指を滑らせ、くりくりと摘み上げたり、先端を撫で回したりと。
「あっ……や……」
 その度にわけのわからない感覚が腰を伝わって、すごい勢いで体中に広がっていく。そこから逃げようとして、勝手に体を捩ってしまう。
「はぁ……はぁ……っ」
 だががっちりと腰を掴まれて、反対に抱き寄せられた。
「はいはい、おとなしくしててね」
 耳元に囁いて、丹波がさらに手を進めてきた。
「っ!」
 するりと後ろに触られて、びくりと肩が跳ねた。
「やめ……」
 抗議しかけた瞬間、つぷ、と入り口から指先が入ってきた。
「っあ……!」
「動くなって。危ないよ?」
 耳元で丹波の荒い息遣いが聞こえる。にゅくにゅくと指を動かして、浅く何度も出し入れされているのがわかった。
「あ……あ……」
 大きく口を開け、必死に息を吸う。唇の端からつう、と唾液が滴ったが、気にしている場合ではない。眼前で世良が食い入るように自分を見ているのに、こんな表情を晒しているということにも、構っていられなかった。
 次第に指が増やされて、すぐに三本になった。中の一点をしつこく擦り上げられると、全身の力が抜けていく。
「あ……たん、ば……っ」
「はぁ……はぁ……」
 堺の方を見ながら、自身を擦り上げている世良に、丹波が目配せした。
「世良もそろそろ苦しいだろ? いいよ、好きなようにして」
 つられてそのペニスを見る。大きく隆起して、赤黒い先端が透明な液体で濡れている。
「あ……」
 それに気を取られている間に、
「マジすか? じゃ……」
 無遠慮に世良の手が伸びてきて、身を固くした。
「なにす……っ」
 逃げようと体を捩ったが、丹波に押さえ込まれているので、動きようがない。いとも簡単に急所を掴まれて、
「ひ……」
「んしょ」
 ますます世良の体が近くに寄ってきた。互いの下半身を摺り合わせて、性器を握り込む。
「ん、はぁ……」
「あ、あ……っ」
 手の中で、二人のペニスが擦れ合って、ぞくぞくと快感が競り上がってきた。
「ぅわ、やっべ、これ……」
 感極まったように世良が呟く。その片手はせわしなく上下していて、じゅぷ、くぷっ、と動くたびに濡れた音を立てる。
「……っ」
 見ていられなくて顔を背けた途端、
「ん……っ」
 顎を掴まれた。無理矢理横を向かされて、唇を塞がれる。
「ん……ぁ、ふ……!」
 ぬるりと舌を絡められた。まるで生き物のようにうごめいて、口内を犯す。唾液を吸い上げるように丹波が息を継いで、ちゅう、と派手な音が鳴った。同時に後ろに入ったままの指も動かされて、わけがわからなくなってくる。
「は……」
 ぼんやりと視界が霞んできた。僅かに顔が離れる。目の前で丹波はにやりと目を細めた。
「エロい顔しちゃって」
 低く囁かれ、ぞく、と鳥肌が立った。
 その間にも世良の手によって高められた堺自身は、今にも爆発しそうになっていた。再び唇を塞がれて、勝手に腰が揺れてしまう。
「ん、ん……っ」
「あ、やば……いく、さかいさん……!」
 声がしたと思った途端、いっそう強く擦り上げられて、
「んっ、ぁあ……っ!」
 一気に下半身へ血が集まって、溢れ出した。後ろがきゅうきゅうと丹波の指を締めつける。
「あ……あ……、」
 射精の間も世良の手がちゅくちゅくと撫でさすってくる。
「あ……んん……っ」
 同時に手の中で達した世良のペニスからも白いものが溢れ、堺のものを濡らしていた。
「はぁっ……はぁっ……」
 荒い息をつきながらも、世良が伸び上がってきた。
「堺さん……」
「ん……」
 今度は世良と唇を合わせる。舌を絡めたと思うと、それはすぐに離れて、顎に噛みつかれた。
「あ……」
 達したばかりの性器がひくひくと震えている。だが余韻に浸る間もなく、
「っん……!」
 後ろの指を一気に引き抜かれ、背をしならせた。
「堺、力抜いててな」
 頭上の声が淡々と言って、
「あ……っ」
 くちゅり、と代わりに固いものが押し当てられた。見なくてもわかる。熱く育った丹波のペニスだ。
「ちょ、待っ……」
 慌てて振り向く。
「おいっ……丹波!」
 どうにか声を絞り出した。が、堺を挟んだところで、丹波と世良は呑気に言葉を交わしている。
「悪いね世良。こっちはお先に」
「やや、そんな……俺こそ、先に出しちゃって」
「……っ」
 てめーら、ふざけんな! そう言ってやろうとした矢先、
「あ、あぁぁあっ……!」
 ずず、と固いものが入り込んできて、思わず目の前の世良に縋りついた。
「あっ……はぁ……っ」
 がくがくと膝が震える。ものすごい圧迫感が支配して、逃げ出したいのにそれが適わない。
「ふっ……く……」
「うわ……キツ……」
 背中から丹波のうれしそうな声が聞こえる。目尻からぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。
「あ、ぐ……っぅ、……ん……」
「さかい〜、力抜けって」
「あ、む、むりだっ……ぁ、」
 後ろから手が伸びてきて、優しく頭を撫でた。
「しょうがねぇなぁ。世良、ちょっと助けてやってくれる?」
「っス!」
 茫洋と目を開けると、前にいる世良がソファから降りて、しゃがみ込んだ。
「え……」
 立ち上がったままの堺の性器を握り、はむ、と口に含んだ。
「あっ! ぁ、あ……っ」
 途端にぞわぞわと快感が背を這い上ってくる。
「あ……ぁ……」
「はは……すげ」
 荒い息を吐きながら、後ろで丹波が笑った。
「めちゃめちゃ締まる。そんなにいい?」
「っく……ぅ、ん……」
 応えることもできず、ぶるぶると首を振る。
「は、ふ……ふぁかい、ふぁん……」
 ペニスを口に銜え込んだまま、世良が上目遣いに見上げてきた。
「きもち、いい?」
「あ、あ……っ」
 先端をぐるりと舐め回し、添えた手を上下させる。先ほど出したばかりというのに、堺のペニスはこれ以上ないくらいに固くなって、血管を浮き立たせている。ちゅう、と吸いつかれて、すぐにも達してしまいそうだ。
「あぁっ……あ……ん、っ」
 意識とは裏腹に、勝手に声が漏れる。甘えるような響きに、自分で嫌になる。けれど、止まらない。
「ぁん……っん、あ、あ、」
 ずるりと丹波がペニスを引き抜く。かと思うと、再びゆっくり押し入ってくる。
「は、ぁ……っ」
 だんだんと動きが速くなってきた。後ろから腰を抱く格好で揺さぶられて、全身にその衝動が伝わってくる。悔しいが、その腰使いのテクニックはなかなかのものだ。丹波の手は堺の胸元に回されて、立ち上がった乳首を執拗に擦り上げてくる。全身が痺れたようになって、わけがわからない。
 はっ、はっ、と荒く息をつきながら、やっとのことで首だけを捻って後ろを見た。
「あ、たんば……ってめ……ぶ、っころ……」
 言葉は途中で止まってしまう。開いた唇から、唾液がつ、と滴った。
「あっ……あ……」
 口を閉じ、天井を見上げた。もう、どうだっていい。気持ちいいし。
 足の間では相変わらず世良が堺自身を銜えている。その唇から、じゅぷ、じゅぷっ、と音を立てて自分のものが出入りしている。見ていてくらくらした。前と後ろを同時に攻め立てられて、限界が近い。
「あ、っも……だめ、だ……っ」
 言葉が口をついて出た途端、ぐい、と顎に手をかけられた。無理矢理後ろを向かされて、唇に丹波のそれが触れた。
「ふ……ぁ、」
「堺、愛してるよ」
「んっ……ん、ふ……っ」
 ねっとりと柔らかな舌が絡められて、気持ちいい。夢中で舌を伸ばし、口内を舐めまわした。がつん、がつん、と中を突き上げられて、衝撃に目がくらむ。
「あ……っあ、あ……」
 その時、じゅう、と世良が強くペニスを吸い上げた。
「ぁ、んんっ……!」
 出る、と思った時にはもう、思い切り熱を吐き出していた。
「っ、は……、」
 どくん、と心臓が跳ね上がる。後ろもきゅうきゅうと収縮して、中にいる丹波を締めつけるのがわかる。
「っ……」
 唇を合わせたまま、僅かに空いた間から、丹波が熱い息を吐いた。敏感になっている内部を擦り上げながら、勢いよく性器を引き抜かれる。
「あ……っ」
 ぴしゃ、と腿のあたりに熱いものがかかった。白い粘液が、どろりと足を伝って落ちていく。
「あ……」
 大きく息を吐きながら、それを見る。大量の精液が、自分の足を汚していた。








/